
ってるって?」
「はい。」
「ああ、助かった。お腹にいいから、換えてくれ。」
「いいですよ。」
俺は先生と弁当を交換した。
「ありがとう。」
先生は、俺の弁当を持って教室を出ていった。
「腹痛か。大変やな。」
そんなことを思いながら、先生の弁当箱を開けた俺は、思わず歓声を上げた。
卵焼きにウインナー、エビフライと、先生の弁当には、それまで俺が見たこともないような豪華な料理が詰め込まれていたのである。
俺は夢中で食った。
世の中に、こんなおいしいものがあったのかというくらい、おいしかった。
先生の腹痛のおかげで、しぼんでいた心もちょっとふくらみ、俺は午後のリレ
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ーでも大活躍することができたのだ。
そして一年が経った。
三年生になった俺は、やっぱり運動会のヒーローだったが、かあちゃんは仕事で来られなかった。
そしてお昼休みになった。
弁当を食べようとしていると、またガラリの教室の戸が開き、先生がやって来た。
「おう、徳永。今年もここで食べていたのか。」
「はい。」
「先生、お腹が痛くなってな。お前の弁当は梅干しとショウガが入ってるって?弁当、換えてくれるか。」
「いいですよ」。
もちろん、俺は喜んで交換し、また先生の豪華な弁当と食べた。